明星幼稚園公式ブログ

劇遊び

Vol.59 2023.12.20

イベント

 この時期、保育室はもちろんのこと、街がクリスマスの装飾に彩られると、子どもに限らず私の心も華やぎ始めます。少し足を延ばして駅前のイルミネーションを見たり、クリスマス柄のお菓子をつい買ってしまったり。

 そして年末を迎えると「早いもので」とか「もう師走」などと何かにつけ言ってしまう私ですが、何も成し得ないうちに月日が流れ、後悔の混ざった気持ちで言わないように、考えないようにしようと決めました。時の流れを変えることはできないですし、この感覚が私にとっての日常なのだと。

 幼い子どもたちの成長も、同様に「早いもの」。今月予定している、年中組、年長組の劇遊びを見ていると、前年から大きく成長した姿を見せ、「早い」成長の日々は同時に、個々の「大きな」成長の日々と改めて感じています。

 年少組の劇遊び発表会は2月を予定しています。年中長のお兄さんお姉さんの発表を観て、自分たちの発表会を少しでもイメージできたらよいのですが、年少さんは初めての経験です。参加することに意義があります。

 私の経験から申しますと、担任やお友だちの前で物語の登場人物になりきって遊ぶことが、はじめは恥ずかしくて「見てる」と言って参加しないお子さんもいます。小道具を並べるのを手伝ってもらったりしながら、興味を持ったタイミングを見計らって誘うと、いつの間にか劇遊びの仲間入りをし、お友だちと一緒に楽しむことができるようになっていきます。

 しかし保護者の方に見ていただくのはハードルが高いお子さんもいて、当日は泣いたり、隠れたり、固まって棒立ち等、様々な表現でボイコットする様子も、その子の心の内を想像すると、愛おしく微笑ましい姿です。

 明星幼稚園の発表会は「ごっこ遊び」の延長としての劇遊びです。しかしこの経験を通して、子どもたちは、歩幅の違いこそあれ、様々な成長を見せてくれます。

 本来「ごっこ遊び」とは目の前に存在しないものをイメージして遊ぶことです。憧れや関心を持った対象になり切ったり、見様見真似でそのフリをしたり、似たものを実際の物に見立てて遊んだりします。

 ごっこ遊びを進めていくと、少しずつ発展し、変化し、新しいものを生み出すこともしばしばあります。

 イメージ力だけでなく、創造力や表現力、他者とのコミュニケーション能力、対応力、物の操作能力などの非認知能力が培われていきます。

 ご存知のように、明星幼稚園の劇遊びは一人ひとりが自分で決定した役を演じます。セリフや動作、ダンスの振り付けにも子どもたちのアイデアや意見が取り入れられるように担任は工夫していきます。 

 仲良しのお友だちと同じ役がいい、お母さんがこの役がいいと言っていた、など自分で決める経緯には様々な理由があります。それでも最後は個々の決断をもって、なりたい役を自分で選択することを楽しむことを目指し担任は導いていきます。

 取り組み始めの様子を見ていると、一人ひとりのモチベーションや緊張など全く異なります。しかし幼児期の成長に寄り添ったこの劇遊びの活動は3年間で大きく実を結ぶと確信しています。

 何より感心するのは、年長組になると、全員が笑顔で(当日は緊張で顔がこわばっているお子さんもいますが。)前を向いて、自分の選んだ役柄を、責任感を持ちつつ楽しみ、全うしようと活動している姿があることです。

 1年前、2年前の姿を思い浮かべると、確実に自分の歩幅で成長している一人ひとりの子どもたちです。その成長に幼稚園での生活が少しでも後押しできていることを実感したとき、涙が出るほど感激いたします。

 話は変わりますが、このところ大人になった卒園生にお会いしたり、保護者の方からお話を伺ったりする機会が重なりました。一人は大学4年生で、卒論のテーマについて私に話を聞きたいと訪ねてくれました。幼稚園教員免許を取得し乳児院で子どもに寄り添った仕事がしたいとのことでした。年少で担任をした時と変わらずとても可愛らしいお嬢さんでしたが、しっかりと自分の将来の目標を語る姿は頼もしい限りでした。

 別の卒園生で偶然お会いした保護者の方からは、「大学院受験のために猛勉強し、進学が決まりました。」という方や、「研修医として親元から離れて頑張っています。」など近況を知ることができました。

 おそらく成人した他の卒園生も、悩み苦しみながらも自己実現を目指してたくましく、自分の進む道を生きていってくれていると信じてやみません。

それではよいお年をお迎えください。


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