吉田 元一

どんな社会が来ようと生きぬく力を

 中学高校を明星で過ごした私の原風景は、国分寺駅から毎日歩いて通った道。雨の日も風の日も30分以上かけ、歩きながら眺めた武蔵野の緑は、50年以上たった今でも思いだす美しい光景です。心身を鍛えるため駅から歩くという徒歩 通学にはじまり、夏は海で遠泳、冬はスキー学校と、心身ともに総合的な教育をうけた貴重な日々でした。

 入学してまもなく、児玉九十先生から、建学の精神についてお話を頂いた。これからは世界に信頼される人にならなきゃいけない、と。その「世界」という言葉が、当時13歳の少年だった私に鮮烈な影響力をもったんですね。私自身、総合商社の道を歩みましたが「世界」という先生の言葉は、貿易を志すことになる私の原点だったのだと思います。児玉先生は、およそ90年も前に現代のグローバリゼーションを洞察した人材育成方針を打ち立てていらした。昭和の私学教育のリーダーとして活躍された先生の先見性に、改めて感銘をうけている次第です。

 社会の激変はますます進み、なくなっていく職業がある一方で、予想もつかない職業も生まれていくことでしょう。教育の役目は、どんな社会が来ようと生き抜く力を養うことです。英語や理数など、いっそう力を入れていく分野はもちろんのこと、個性、教養、人格にあらわれる目に見えない学力があって初めて「世界」に貢献できる人になれるはず。まさに、明星学苑の良き伝統や一貫教育の強みを発揮するときが来たと考えています。

写真:吉田 元一 吉田 元一 明星学苑理事長

筆者プロフィール

SNSでシェアする
Facebookで共有する
LINEで共有する
Twitterで共有する