宝塚歌劇団を引退して新たな分野で挑戦 明星で身に付けた凝念の習慣を今も継続する

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元宝塚歌劇団 舞台俳優 小平市観光まちづくり大使

鳳真由さん

おおとり まゆ

【明星小学校・明星中学校卒業 明星高校出身】

宝塚歌劇団で花組の主要メンバーとして約11年間活躍し、現在は表現活動を継続しつつ、診療情報管理士、心理カウンセラー、小平市まちづくり大使など様々な分野で活動する鳳真由さん。学生時代の思い出と、これからのキャリアについて語っていただきました。

宝塚歌劇団を退団後、大学で医療福祉を学ぶ

明星学苑には、小学校から宝塚音楽学校に入学する前の高校1年生の頃まで通っていました。最初は内向的だったのですが、小学4年生の時に行われたドッジボール大会で活躍して、それをきっかけに活動的になりました。その後は高校までずっと生徒会に入るなど本当に積極的になったので、ドッジボールが1つのターニングポイントだったと思います。

宝塚歌劇団は2歳ぐらいから何度も見に行っていて、大好きでした。入団しようと本気で思い始めたのは中学2年生の頃でしょうか。入団既定の身長をクリアして162センチくらいに背が伸びたので、入るなら男役かなとは思っていました。小学生のときは課外でバレエとピアノは習っていたのですが、それからは歌のレッスンもプラスして受験に向けて準備を始めました。初めて役をいただいて舞台から客席を見た時は、今でもその光景を覚えているほど嬉しかったですね。

今はもうないかもしれませんが、小学生の頃はテレビドラマ部という珍しい部に入って、先生が書いた脚本を元にみんなで8ミリカメラを使って映像作品を作っていました。中学では生徒会活動をしていた以外は課外のレッスンなどで忙しかったため、部活動はしていませんでした。ただ、演劇部のお手伝いで、新入生歓迎会にダンスの助っ人として参加した思い出があります。

学生時代から宝塚に入りたいと周囲に公言していましたし、先生たちもそれを知っていたと思います。一度も勉強しろと言われたことがなく、ゆとりを持って育てていただきました。ただ、国語や英語など言葉に関する勉強は好きで、今でも時間があるときに百人一首を読んで、世界観に浸ったりしています。宝塚に入ってからも、言葉に対する感覚を磨いたのはセリフを表現する際などに役立った気がします。宝塚時代は、台本の漢字が読めない仲間に読み方を教えてあげたりしていました(笑)。

明星小学校入学式、ご家族と一緒に(中央左が鳳さん)

宝塚を退団した後は、国際医療福祉大学に入学して、医療経営を中心に学びました。家業が医者だったこともありますし、宝塚に入ってからも交流が続いていた明星時代の同級生たちの姿を見て、大学生生活に興味があったというのも理由です。退団する直前に、病気で入院していた祖父に相談したところ、珍しく背中を押してくれたのも決断につながりました。また、ちょうどその頃、道端で倒れている高齢者の方を助けて、病院に連れて行く経験もしました。そうしたこともあって、舞台で人々に夢を与える以外にも、いろいろな形で人助けができると良いなと考えるようになりました。

表現活動は継続しつつ、教育分野でも貢献したい

大学では診療情報管理士の資格を取るためのカリキュラムを学んでいたのですが、海外研修の直前にコロナ禍が始まってしまい、行けなくなってしまいました。対面授業が好きだったのでZoomの授業が自分に合わず、何とか面白くしたいなと思って始めたのがオンライン相談室です。最初は宝塚ファンのコミュニティに呼びかけて作ったのですが、日々の悩み相談を始め、朗読劇体験や読書会を行ったり、場合によっては歌や芝居を教えてほしいと言われたりもします。相談事に対応するために、心理カウンセラーの資格も取りました。

宝塚を引退した後のセカンドキャリアもいろいろなパターンがあり、芸能活動を続ける人もいれば制作側に回った人もいますし、他業種に進まれたり家業を継がれたりしている人もいます。私自身の今後のキャリアについては、やはりこれまで積み上げてきたものを活かしたいので、表現の世界での活動は少しでも続けていきたいです。また、教育の分野に興味があるので、大学で授業を持ちたいというのが一つの目標です。現在もゲストスピーカーとして、複数の大学で学生さん向けや一般の方向けにお話しする機会を頂いているので、もう少し深めていきたいと思っています。

現在はゲストスピーカーとして講演活動も行っている鳳さん

どんな仕事でも一点集中が大事だと思っていますし、注意力散漫になってしまうとパフォーマンスが落ちてしまいます。心を落ちつかせて集中力を発揮したい時には、明星学苑で日々行っていた凝念※1が役立っています。宝塚時代に大きな役をいただいた時もそうでしたし、朝起きた時や車を運転する前など、様々な場面で目を閉じて深呼吸しながら集中する感覚を思い出します。そうした習慣が、今の自分を支えてくれているように思えます。明星で受けた教育のお陰ですね。

※1 凝念(ぎょうねん)
明星創設時から伝えられる修養法。
姿勢正しく腰を掛け、両手は下腹部に合わせて瞑目して、臍下丹田(せいかたんでん)に力を入れるとともに、心を丹田に集中するよう努め、精神を落ち着かせる。