自立支援施設の職員として子供たちの成長を見るのが仕事のやりがい

#092

東京都職員

新井優介さん

あらい ゆうすけ

【明星大学人文学部福祉実践学科2017年卒】

明星大学の福祉学科で児童福祉を学び、現在は東京都の自立支援施設に勤務する新井優介さん。問題を抱えた子どもたちと接する非常に難しい仕事ですが、やりがいを感じていると語ります。仕事を通じて様々な経験を積むことで自分自身の成長にも繋がっているとのことです。

試行錯誤しながら子どもたちとのかかわり方を学ぶ

東京都の自立支援施設に勤務して、今年で6年目になります。児童相談所に相談があったケースや、虐待を受けて保護が必要なケース、あるいは児童相談所が警察から通告を受けて保護が必要なお子さんが児童相談所の判断のもと親子の同意を得て入所する施設となります。そうした子供たちと寮で一緒に生活する中で、様々な支援を行っています。東京都の福祉人材は50代以上が多く30~40代は少ないのですが、ここ最近は若手職員が増えているので、私は中堅くらいのポジションになります。

複雑な家庭環境で育ったり、両親から十分な愛情を受けてこなかったりした子たちの多くは、大人との関係の作り方が分かりません。また、褒めてもらっても素直に受け取れなかったり、悪いことをして注意すると不貞腐れて暴れたりするなど、自己表現が苦手な子たちもいます。いわゆる発達障害の子たちも多いのですが、発達障害にも様々なタイプがある上、それぞれの生活環境によっても状況は変わってくるので、一人ひとりに対して違う対応をしなくてはなりません。昔はできたやり方が通用しないことも多く、ケースバイケースで接し方を考えなければならない難しさがあります。

福祉系の仕事は1日で成果が見えるものではないので、この仕事のやりがいはやはり関わった子どもたちが成長しているのを実感した時です。それは彼らと話をする中でも感じますし、退所後にアフターケアで関わっている子たちから、進学や就職など人生の次のステップに進んだ報告を聞いた時も嬉しく思います。

就職して2年目までは、自分の力不足をすごく感じていました。1年目は高校生を主に見ていたので、自分たちで何でもできる子たちも比較的多かったのですが、2年目から中学生を見るようになり、こちらから言わなくてはいけない事柄が増えました。彼ら自身でできない事に対して、果たしてどこまで介入して良いのか、何をしたら良いのか分からず、悩んだ時期でした。

3年目に入ると、関わりの難しい子どもが多く、何をしても状況が変わらないことから仕事を辞めるか悩んだ時期ありました。ただ、その1年があったことで子供に何をすれば良いのか、自分が子供に何をしてあげたいのかが明確に意識できるようになり、自分自身の成長に繋がったと思います。外の環境と比べて、施設内の生活ではどうしてもできないことが多いので、子どもたちにできるだけ色々な体験をさせてあげることを特に意識するようになりました。

施設での実習などを通じて将来の道を決める

本格的に福祉の道を目指すようになったのは大学時代からですが、中学2年生の頃に自分が通っていた幼稚園に職場体験に行くなど、もともと教育の分野に興味はありました。福祉学科は人数が少ないので、それほど多くの友人と幅広く交流していたわけではないのですが、2年生の時に参加した相談援助演習では、同じグループに入った人たちとロールプレイや意見交換などを通じて親睦を深めることが出来ました。

進路を決めるにあたって大きく影響したのは、大学3年時に参加した施設での実習です。そこで子供たちと関わるのが面白いと感じて、児童福祉関係の仕事に就くことを決心しました。また、ゼミの担当教授である藤井常文先生から、児童福祉施設や児童相談所のことなどをうかがって興味が深まったのも、将来の道を決める後押しとなりました。先輩からの紹介で、東京都の一時保護所でアルバイトをさせていただいたのも貴重な経験です。そこで、就職する前に児童福祉の現場を経験させていただいたことは、非常に大きかったと思います。

当面は現在の職場で頑張っていきますが、尊敬する藤井先生のように、将来は児童福祉士としても働いてみたいと考えています。そのために、現在の職場で様々な経験を踏んで、成長していきたいと思っています。

福祉を学ぶ後輩たちに伝えたいのは、もし自分がなりたいものが見つかっているのであれば、それに向けた準備をしっかりやっておくことの重要性です。福祉の現場は理想と現実のギャップが必ずあり、それが理由でやめてしまう方もいるので、実際に飛び込んでみて、すり合わせをするのが大事だと思います。実際に働いてみると、難しいことや厳しいことがあるとは思いますが、その中でも楽しさを見つけて、一つずつステップアップしていただけたらと思います。