キャンパス内の自然環境を大学の価値向上に結び付ける

#069

明星大学理工学部総合理工学科准教授

柳川亜季さん

やながわ あき

明星大学で、学部や学科の垣根を超えた横断的な取り組みとして実施されているのが「明星SATOYAMAプロジェクト2022→2025」です。旗振り役を務めるのは理工学部総合理工学科の柳川亜季准教授。プロジェクトがスタートしたきっかけや、その目的などについて伺いました。

大学内の生態系から生まれたプロジェクト

2018年に明星大学理工学部総合理工学科の教員として着任し、現在は学内の自然環境の活用や地域連携を進める「明星SATOYAMAプロジェクト2022→2025」に携わっています。自然環境に関するビックデータ解析の研究に加え、以前は、多摩川の河川敷で生態調査をしていましたが、コロナ禍により学外での調査が難しくなり、学内の生態調査へと切り替えたことが、プロジェクトがスタートするきっかけとなりました。

明星大学のキャンパスの特徴は、丘陵地地形の一定の区域内に、絶滅危惧種を含む非常に珍しい水生昆虫や植物などが生息しているところです。全国的に見ても、ゲンジボタルの生息や、キンラン、ギンラン、サイハイランといった植物が1つのキャンパス内で観察できる場所は珍しいと言えます。

私は学生時代からモンゴルの植物や土壌を専門に砂漠化防止に関する研究をし、日本の土壌や植物に関してはほとんど知識がありませんでした。そこで、以前からお世話になっていた研究者の方に、大学内で撮影した昆虫や植物の写真をお見せしたところ、非常に珍しい生物がいるので、学校教育に活用するべきだとの助言を受けました。

学生たちと一緒に大学構内でヤブカンゾウの移植を行った柳川さん(前列中央)

次に、地方創生や地域の価値向上について研究を行っている経営学部の大森寛文先生に相談して、学内の自然環境を大学のブランド価値につなげる方法を教わりました。大森先生の他にもデザイン学部の萩原修先生、建築学部の村上晶子先生、米田正彦先生、教育学部の髙橋珠州彦先生、経営学部の安岡寛道先生、理工学部の齊藤剛先生など、様々な方面からご協力をいただき、定期的に議論を重ねていきました。

明星SATOYAMAプロジェクトの授業で経営学部の学生たちにホタル池の説明をする理工学部の学生

結果的に予算の獲得に成功し、学部、学科の垣根を超えたプロジェクトとなりました。今では、学生たちがお互いの授業を行き来するようになり、教職員も「多摩の里山を楽しむキャンパス」という基本理念の下、それぞれの専門領域を活かした取り組みを行っています。さらに、地域住民、他大学といった多様な人々や組織とも連携して、地域全体に広がっていく活動となっています。プロジェクトの目的は大学の価値を高めること、そして何より、教員や学生など大学に所属する人たちに、このキャンパスが素晴らしいものであると誇りに思ってほしい気持ちがあります。当初はここまで範囲が広がるとは考えていなかったのですが、気が付けば多くの方々を巻き込んだ取り組みとなりました。明星大学の建物も綺麗で素晴らしいのですが、教室に来るだけではなく、多様な生態系に触れることのできるキャンパスを訪れること自体に価値を感じていただければと思っています。

SATOYAMA植樹会集合写真 同窓生のみなさんと一緒に(前列向って左から3番目が柳川さん)

偶然ではありますが、明星学苑の100周年とも重なり、地域に愛される大学を目指す上で記念すべきプロジェクトになったと思います。プロジェクトを通じて、「明星大学がここにあって良かった」と地域住民の皆さんや行政関係の人たちにも感じていただいて、入学志望者の増加などにも結びつけば嬉しく思います。

人とのコミュニケーションによって形が生まれる

私は本来、大学で世界史の勉強がしたかったのですが、受験に失敗して、急遽文系から理系に移ったのが、現在の分野で研究者になったきっかけでした。田舎育ちにも関わらず虫が大嫌いで、今でも触れないぐらいです(笑)。日本の植物の名称などもそれほど詳しくありません。

そんな私が昆虫や植物について調べるようになったのは、私のところにある学生がやってきて、卒業研究のテーマとして虫について勉強したいという理由で、一緒に多摩川で土壌と昆虫の調査をするようになってからです。彼の研究を手伝ううちに、生物についても調べるようになり、前述したような過程を経て、明星SATOYAMAプロジェクトに発展していきました。

私が明星学苑と関わるようになったのは大学教員になってからですが、研究環境が大変整っているので有難いと思っています。また、学生さんたちを見ていると、とても素直で地に足がついている印象です。学生さんたちの雰囲気は、何となくキャンパスの自然ともイメージが合っているような気がします。

学生の皆さんには、ぜひ、一人でも多くの人たちと出会い、積極的にコミュニケーションを取ってほしいです。高校まで文系だった私が、理系分野を教える立場になったことは、これまでの出会いに導かれたようなものです。思い返せば、それらの出会いは、すべて自分から起こした行動から生まれたものでした。大変有難く、幸運なことに、出会った方々は新しい考え方や選択肢を示して、導いてくださいました。明星SATOYAMAプロジェクトの先生方との出会いも同様です。多様な専門分野をもつ明星大学の先生方がキャンパスに新しい価値を見つけて、共有してくださっています。ですから、あまり先のことは心配しないで、声に出して行動してみてください。今回のプロジェクトのように何かが生まれるかもしれません。困ったときは、明星学苑には、私を含め学生の皆さんを応援したいと思っている教職員、同窓生がたくさんいることを思い出して、相談してもらえたら嬉しいです。

明星SATOYAMAプロジェクトHP
https://kenkyu.hino.meisei-u.ac.jp/satoyama/

明星SATOYAMAプロジェクトのインスタグラム
https://z-p15.www.instagram.com/meisei_satoyama_project/

デザイン学部の萩原修先生が企画されたデザインセッション多摩
「みどりのオープンキャンパス」
https://meide.jp/dest2022/