守るべき伝統と変えるべき部分を見極め、子供たちと共にこれからの時代を生きる

#068

明星小学校 校長補佐

渡邊保さん

わたなべ たもつ

【明星小学校・明星中学・明星高校・明星大学 人文学部心理・教育学科 教育学専修 1991年卒】

明星小学生在学時代から教師となった現在まで明星学苑と関り、その文化を知り尽くしている渡邊保さん。教師として日々意識していることは「誠心誠意」。伝統を守りながらも、新たな時代に向け変えるべき部分は変えていくことが大切だと語ります。長きにわたり学苑を見てきた立場から、明星の良さと子供たちへの思いを話していただきました。

褒めて伸ばす明星学苑の伝統

小学校から大学まで明星学苑に通い、明星小学校に教師として就職したので、49年間ずっと明星と関わっていることになります。明星小に入学した理由は、母が児玉九十先生の教えに感銘を受け、絶対にこの学校だと決めていたということです。当時は福生に住んでいて、その後の引っ越し先も八王子だったため、通学は大変でした。地元に友達がほとんどいなかったので、下校時間ギリギリまでよく学校で遊んでいました。

小学生3年生の頃に担任だった稲垣克男先生が非常に印象的で、厳しい中にも愛が感じられる人でした。私が教師を目指すようになったのは、高校生の時に見たテレビドラマがきっかけだったのですが、その先生とドラマに出てくる先生の雰囲気が非常によく似ていて、進路を決める後押しになりました。先生はとにかく褒めるのが上手で、体を動かすのが大好きだった私は、よく体育の時間に名前を呼ばれて、みんなの前で技を披露したりしていました。現在その先生は故郷の北海道に戻っていますが、未だに交流が続いています。

明星学苑では、児玉九十先生の教えの根本である「褒めて伸ばす」という方針が受け継がれているため、他の先生方もみなさん褒め上手です。学生時代はずっと競技スキーをしていて、高校時代のスキー部の先生もとにかく良いところを見つけては褒めていただきました。不調な時でもよく褒めていただき、叱られた記憶がほとんどありません。そうした経験が積み重なることで自信が持てましたし、上手く行かないときも前向きになれたのだと思います。

全国中学校スキー大会出場時の写真

自分が教師になってみて分かったのですが、私のような子供を褒めるのは大変だっただろうな、と思います(笑)。しかし、褒められて嬉しくなった気持ちを今でも覚えているので、同じような気持ちを子供たちに持ってほしいと思いながら接しています。今の子供たちを見ても、褒められて成長する伸びしろを常に感じています。

子供たちを褒める時に意識しているのは、うわべだけでなく本気で褒めるという事です。なかなか言う事を聞いてくれなかったり、こちらの意図が伝わらなかったりする時は難しさも感じますが、それでもできるだけ子供たちの良いところを見つけて褒め、喜んでいる姿を見ながら一緒に喜ぶようにしています。

「自分を見てほしい」という気持ちで広報に携わる

小学生の頃からずっと明星にいるため、学苑の様子が年月を経て随分と変わってきたのが分かります。そうした中でも、変えてはいけない部分と、時代に合わせて変えていくべきところがあります。以前、広報担当者として外部に向けて学校の魅力をどのようにアピールしていくかを考えていたのですが、「時代と共に変えていかなくてはならないものもある」という細水保宏校長の言葉が、だんだんと腑に落ちるようになっていきました。

明星の伝統である凝念教育や体験学習など、今後も継承していくべきものがある一方で、それだけではこれからの時代に生き残っていく事はできません。そこの取捨選択をしっかりやっていく時期に来ていると思います。今はインターネットなど様々な手段がありますが、広報担当時代は外部に学苑の魅力を発信するため、どこにでも足を運んでいました。そして、何よりも明星の文化を長きにわたって体験してきた私自身を見てほしいという意識でやっていました。

宿泊学習でのひとコマ(黒姫高原にて)

授業のやり方も、子供たちが主体性を持てるような方向に変わってきています。当初は新しいやり方を受け入れなければという気持ちがありつつも、経験がないので難しい部分がありました。ただ、苦労はありましたが、子供たちと一つになっていこうという思いで授業に臨んでいくうちに、徐々に浸透してきたと思います。保護者の方からは「先生方の熱意がいつも伝わってくる」といった言葉を頂けるようになりました。

卒業式。児童からのお手紙には毎年グッとさせられる。

子供たちには、何でも良いので「こうなりたい」という思いを持っていてほしいと思っています。将来、自分が思い描いた通りになれる人はごく一部かもしれませんが、自分の思いに従って、一歩一歩近づいて行ってほしいです。私自身が教師という職業に就けた経験からも、それを強く願っています。