一次生産者に寄り添う仕事~海外生活を経て日本を見つめなおす

#067

株式会社雨風太陽

二宮真由奈さん

にのみや まゆな

【明星大学人文学部国際コミュニケーション学科 2019年卒】

大学時代は海外に興味を持ち、イタリアやオランダでのフィールドワークやアイルランド留学などを通じて積極的に学んだ二宮真由奈さん。現在は、農業や漁業を営む一次生産者と消費者を結ぶベンチャー企業で働いています。日本を離れてみて得られた新たな視点と、現在の仕事について語っていただきました。

留学で新たな視点を得て大学院進学を決意

高校時代から海外に興味があったので、国際コミュニケーション学科がある明星大学の人文学部に進学しました。茨城県からわざわざ上京したのを無駄にしないよう、できる限りのことを学ぼうと、大学時代はとにかく何でも吸収するつもりで過ごしました。サマースクールや海外で行われたフィールドワークなどにも積極的に参加し、2年生の時にはアイルランドに約5か月間留学しました。

現地の学生たちとの交流や授業に参加して学んだのは、自分の意見をしっかり伝えることの大切さです。海外では自分の意見を言わない=意見がない、と見なされてしまいます。以前はどちらかと言えば消極的なタイプでしたが、正解かどうかは分からなくても必ず自分の思ったことを発言するようになりました。留学前からその大切さを教えてくれていたのは、田中宏昌先生でした。今も発言する大切さを意識して仕事にも励んでいます。

また、留学中は遠出をしていたのですが、電車やバスが遅れるのは当たり前だし、迷子になることもありました。日本では当たり前だと思っていたことが通用しないことも多く、物事を善悪だけでなく、さまざまな視点で見る重要性を感じました。

留学帰国後、学科イベントのために来日した国際ボランティアを浅草に案内した際の写真

それまでは、「海外に行きたい」という気持ちが強かったのですが、実際に現地で生活して、日本を外側から見た経験によって、今度は日本の事をもっと知りたい思うようになりました。

進路を選ぶにあたって特に影響を受けたのは、毛利聡子先生でした。特に、毛利先生の授業では世界の貧困問題や水問題などさまざまなテーマについて学んだのですが、中でも一番興味を持ったのが遺伝子組み換え食品の問題です。 茨城に住む母が、自然食品の販売や体に良い原料を使った食事を提供するお店を営んでいることもあり、食の問題には強い関心を持っていました。食と農の安全性についてもっと学びたいと思い、早稲田大学大学院のアジア太平洋研究科に進むことにしました。

自分軸を持ち、どんな状況でも生きていく力を

現在は、農家や漁師などの生産者と消費者を直接結ぶプラットフォーム「ポケットマルシェ」を展開している雨風太陽という会社で、カスタマーサポート担当として働いています。大学院で種に関して勉強していた時、実際に種を守ってくれている農家をサポートできる仕事は何かと考えていた時、代表取締役の高橋博之が全国の一次生産者との繋がりがある事業を展開していると知り、アルバイトとして働かせてもらうことになりました。私にとってはこれが実質的な就職活動のようなものだったので、大学院修了後はそのまま就職しました。

仕事を通じて生産者のリアルな声を聞くと、思っていた以上に大変なことがよく分かりました。生産者の要望と消費者の要望が合わないケースもあるため、間に入って調整役を果たすこともあります。大変ではありますが、生産者を応援している実感を抱ける今の仕事には大きなやりがいを感じています。コロナ禍で自宅消費の需要が増えたこともあり、現在は全国から約7千人の生産者と、約70万人のユーザーの方々に登録していただいています。従業員数もアルバイトを始めたころは20名程度だったのですが、約60名に増えました。

強めの表現ではありますが、社長の高橋はよく「人間札束食って生きていけんのか」と言っています。これは「自分が何に生かされているのかについて、一人ひとりが認識してほしい」という社会へのメッセージです。私自身も生産についてさらに学ぶために、平日は茨城でリモートワークをする傍ら、週末は県外で農作業を行っています。農家の人に種のまき方から教わって、収穫物を他の人たちと分けあったり、母のお店で使ったりしています。

自ら農業を経験することで、生産者さんたちの気持ちに寄り添えるようになった気がします。また、母のお店で月に一度、ポケットマルシェに登録している生産者さんたちが集まって販売会を開くなど、思わぬ繋がりも生まれて嬉しく思っています。

勤務先の部内の方との写真(前列左から2番目が二宮さん)

将来のビジョンは明確に決まっているわけではないですが、地に足をつけて、自分の軸をしっかり持てる人間になりたいと考えています。東日本大震災やコロナ禍で経験したように、この先何が起きるか分かりません。でも、どんな状況になっても、生きる知恵や力をつけていれば、自信を持ってやっていけると思うからです。明星大学の皆さんにも、自分軸をしっかり持って頑張っていただけたらと思います。