大学4年時に起業 地方創生の分野で事業に尽力

#037

株式会社ヲンク代表

金子晃輝さん

かねこ こうき

【明星大学経営学部2019年卒】

金子晃輝さんは明星大学4年生の頃に起業し、日野市の地域活性化、秋田県にほか市の廃校利活用事業などを手掛けてきました。人と人との繋がりを重視して事業を展開していくスタンスや携わってきた仕事の中身、そして地域活性化・地方創生事業の魅力について語っていただきました。

仕事は「責任のある遊び」がポリシー

地域活性化や地方創生には高校生のころから興味があり、大学在学中に起業しました。以前は建築士になりたかったのですが、最終的には地域活性化の分野で、自分が会社を引っ張っていける存在になりたいと考えるようになりました。明星大学の経営学部を選んだ理由は、入学前にさまざまな大学を見た中で、座学だけでなく、フィールドワークで実践的な内容を学べそうだったからです。先生と話をするうち、ここならすぐに起業できるのではないかと思いました。

起業の準備として、まずは資金を貯めることと、敬語の使い方など社会のルールを学ぶことが必要と考え、在学中から外壁修理や補修を手掛ける職人の世界で働きだしました。実家が板金屋なので、父親の仕事を手伝ったりもしていましたね。結局、一番身に付いたのは社会人のマナーというより縦社会のルールや技術でしたが、後に秋田県で廃校を利活用する事業を手掛けた際には、建築や施工などに関する知識が役立ちました。

ITベンチャーなど華やかな世界にも興味はあったのですが、僕の仕事に対する哲学は「責任のある遊び」なんです。自分が手掛けて楽しいと思えるかどうかで考えると、やはり地方創生の仕事がしたいなと。周りを見ると、学生起業家で地方創生をテーマにしている同世代がほとんどいなかったので、「この領域なら勝てる」と思ったのも理由です。

大学3年生の時の駒林先生のビジネスプランニングの授業にて優勝

地域活性化で最初に取り組んだのは、大学の授業の一環として行われた、日野市との連携による事業です。テーマは、独居老人の孤独死や個人経営の飲食店の衰退といった地域が抱える課題に対して、いかに解決策を打ち出していくか。最初は実情を探るためにボランティアとして高齢者の買い物に同行したり、空き家を改修して人々の居場所づくりを行ったりしていました。そうした活動を通じて地元の商工会議所の方たちや経営者の方たちとの繋がりが生まれ、いろいろと学ぶことが出来ました。

初めて高幡不動駅周辺で街バルを行ったときの記念写真

日野市における活動の一例を挙げると、個人飲食店を盛り上げるために作った「ひのグルメ部」があります。日野駅周辺は都心のベッドタウンであるにも関わらず、なぜか駅周辺の飲食店にはあまりお客さんが入っていなかったんです。20人ほどの地域の方に参加いただいたとグルメ部を結成して食べ歩きをする一方で、店主の皆さんから実情を探っていったところ「街バルなどのイベントを行ってはいるが、忙しくて運営に手が回らない」との声を聴きました。そこで、われわれが街バルのコンセプト作りから企画運営、宣伝などを手掛ける代わりに、チケットの売り上げの一部を収益としていただくビジネスを始めました。そのタイミングで会社を設立し、日野駅周辺だけでなく、豊田駅、高幡不動駅周辺でも同様の取り組みを行っていきました。ですので、当時は「街バル会社の人」として多摩地域の人たちには認識されていましたね。

秋田県で廃校利活用の事業に参画

現在は、秋田県のにかほ市に移住して、廃校を再生したインキュベーション施設「わくばにかほ」を運営する事業に携わっています。卒業を機に仲間たちは就職していったのですが、私はそのまま地方創生事業に本気で取り組もうと考えていました。そんな時に、ジェイアール東日本企画さんから廃校利用事業のお話を頂き、大きな興味を抱いたのが参画のきっかけです。秋田県はそれまで訪れたことがなかったのですが、現地にひとりで移住して事業をスタートすることになりました。

にかほ市で事業を展開するにあたっては、日野市での経験が大いに役立ちました。日野市の時と同様、最初のうちは地元の人たちに溶け込むことを意識して、事業を行いやすい環境づくりに徹していました。周りからは、義理と人情を重視する僕のやり方は「昭和っぽい」とよく言われます(笑)。

当初はビジネスセミナーなどを開いてもあまり人が集まらなかったのですが、現地の方々と本音で話せる関係性を築き、価値観を共有することで上手く回るようになり、現在「わくばにかほ」には8社が入居して満員となっています。そこで起業家の方たちに事業立ち上げのアドバイスを行っている他、にかほ市の魅力を発信するメディアサイトやPR動画の企画・作成なども手掛けています。日常生活の面でも、にかほは想像していた以上に住み心地が良いので、しばらく住み続けたいですね。

にかほ市の金浦漁港にてハタハタの選別を行っている様子

将来的には、地方創生事業を日本だけでなく海外でも展開したいと考えています。そちらで安定的に収益を得る一方、別の分野でもう少し規模の大きいビジネスの構想もいくつか抱いています。アイデアはすでにあるので、準備ができ次第スタートする予定です。