大学院で一念発起し猛勉強、税理士として活躍の幅を広げる

#026

税理士法人のあおば湘南支店支店長

角田孝哉さん

つのだ たかや

【明星大学経済学部経済学科2010年卒】

角田孝哉さんは大学院で経済学、租税法を学んだ後に税理士資格を取得し、現在は税理士法人のあおば湘南支店支店長として業務に従事しています。大学時代はバンド活動に明け暮れていたものの、就職難に直面し、税理士になることを決意。大学院で租税法に関する修士論文を執筆し修了後、働きながら猛勉強を経て見事資格を取得され、現在は税理士法人の事業所運営や顧客企業の支援で忙しい毎日を送っています。学生時代は失敗も多かったと語りますが、それをどう今に活かしたのか。お話を伺いました。

進路を決めるも苦労の連続だった学生時代

2006年に経済学部経済学科に入学し、大学時代は正直な話し、卒業単位ギリギリでしたが、友人に支えられて楽しく過ごさせていただきました。
部活動ではギター・マンドリン部に所属しましたが、遠方から通いでしたので、部活とバイトとの両立が難しく、短期間で退部してしまいました。退部後も先輩にはなにかと目をかけていただき、学外のR&B系バンドのメンバーに誘われ、町田駅付近で1年弱ライブ活動等をしていました。先輩とのバンド活動には本気で取り組みましたが、私自身、バンド活動で生計を立てるレベルまでどう進めていったらいいのかわからなかったため、道半ばで就職活動へと舵を切りました。これまでの経験が少しでも活かせそうな音響メーカーへの就職を希望していました。

ところが、その頃ちょうどリーマンショックが起こり、企業が採用に慎重になったため就職活動が難しくなりました。長引く就職活動の中、ずっとバンド活動ばかりやってきた私では、社会で通用するスキルや能力に欠けているのだ、と思うようになりました。

自分自身に力をつける時間を確保し、力をつけた上で社会に出ていきたいと思い、明星大学大学院で経済学の研究をしながら、在学中に試験勉強して公務員になろうと考えました。公務員試験に経済学の研究・知識を活かせると思ったからです。そんな考えを当時研究科長であった片岡晴雄先生に話したところ、「君の考え方だったら、公務員じゃなくてもっと良い職業がある。それは税理士だ。試験勉強はかなり大変だが、明星の大学院に来てしっかり修士論文を書けば、税理士試験の2科目は取れる」とアドバイスを受けました。それが、現在の道を選んだきっかけです。

それまで税理士という職業は聞いたことがあるものの、自分がなろうと考えたことは一度もありませんでした。しかし調べていくと、勉強で身につけた知識を持って人の役に立てる仕事であることが分かり、私が目指す「社会人としての在り方」に合致していました。それから、税理士資格取得を目指し、日商簿記2級から勉強をスタートしました。

明星大学のシェイクスピアホールで行われたギタマン部と
Fretlessのジョイントコンサート(2007年)

大学では経済学を勉強していましたが、法学はほとんど勉強したことがありませんでした。そのため、大学院では基礎の基礎から自分で学んだうえで、租税法の研究やレポートも行う必要があったため、最初の1年間は特に大変でした。基礎的な勉強のために研究領域以外にも参考書や専門書が必要で、すぐにお金が足りなくなりました。アルバイトを講義の合間にねじ込んで、なんとか必要なお金を確保し、給与が入ったらすぐに本屋で使い切ってくることもありました。ところが苦労して買ってもバイトで疲れていて全然読めない、勉強時間が十分に取れず成果が出ない、焦る、といった負の連鎖が続きました。自分で決めたことでしたが、精神的に辛い時期でした。

幸い2年目からは奨学金を利用させてもらうこととなり、金銭面での余裕ができたためバイトを減らして研究に打ち込む時間を確保できました。
大学院の2年間はいろいろありましたが、租税法に関して全くの素人だった私を手取り足取りご指導いただいた、指導教授の濵田明子先生には特に感謝しています。

明星大学での経験が仕事に生きる

大学院を無事に修了できましたが、就職活動は難航しました。大手ではなく街の税理士の立場で、地域に直接貢献できるような仕事をしていきたいと考えていたため、中小と個人の税理士事務所を対象に就職活動を行いました。しかし小さい事務所になればなるほど、即戦力のみ採用の傾向が強く、門前払いが続きました。在学中に科目合格出来ていなかったため、税理士試験で一科目でも合格しないと税理士事務所に入れないのだと痛感しました。そこで、次の試験では一科目以上必ず受かるという約束で、半年間だけ働かずに受験に専念したい、と親に頼んで了承を得ました。濵田先生からは修了後も研究生として残ってもいい、と言っていただけたのでゼミに顔を出しながら、勉強と研究を継続しようと決めたその数日後、落ちたものと思い込んでいた現在の税理士事務所から内定をいただき、無事に就職することができました。

その後は働きながら税理士試験の受験をし、大学院修了後5年ほどで20代のうちに税理士資格を取得することができました。現在、事務所は税理士法人となり、私は初の支店立ち上げから管理運営を任され、あおば湘南支店の支店長として事務所運営や顧客支援に東奔西走しております。特に、中小企業への事業計画策定支援が評価され、関東圏を出て全国的にも仕事ができるようになり、非常に刺激的で楽しい毎日を過ごさせていただいています。

中小企業向けものづくり補助金セミナーの講師として

そんな今があるのは明星大学での経験、そして大学院で濵田先生にご指導いただけたおかげです。
学恩に報いたいという想いから、大学院修了直後から有志の判例研究会を実施したり、現役ゼミ生の研究発表会等にオブザーバーとして参加させていただいたりと、さまざまな形でゼミに関わらせていただきました。
そしてつい先日、税理士になったゼミの後輩から「租税法の同窓会を作りたいのでぜひ幹事になってほしい」とお話を頂き、二つ返事でお引き受けさせていただきました。今後は同窓会を通じて、明星大学から税理士を目指し、社会で活躍していく方の支援活動を行いたいと考えております。

失敗を恐れず前向きに

学生時代は失敗も多く経験しましたが、その経験から学生の皆さんには「仮に失敗しても大丈夫」と伝えたいです。失敗をしても次に活かしていければ全く問題ありませんし、いつの間にか過去の失敗が活きてくることも多くあります。

今は変化の激しい時代になっています。その中で未来を切り開いていくためには、新しいことにチャレンジしていくことが求められますが、新しいことには失敗がつきものです。でもその失敗は前進していることの証でもあります。失敗を恐れずに前向きに色んなことへチャレンジしていってください。

また、学友は社会人になってからもフラットでいられる関係です。友人や仲間たちとの関係は人生をより豊かなものにしてくれると思います。学生時代からのご縁を大切に。一度きりの人生を思いきり楽しんでください。